RI:基準タイムも馬場指数も入力不要のスピード指数
RIは、走破タイムを「コースや年齢で決まる部分」「そのレースの全馬に共通する部分」「馬の力」に分解して推定するスピード指数です。分解の仕方は、過去のレースの走破タイムからモデルが一括で推定します。人が毎週入力する数値はありません。
一般的なスピード指数に必要な基準タイムと馬場指数
スピード指数は、異なるコース・異なる日の走りを同じ物差しで比較するための数値です。一般的な方式では走破タイムを2種類の数値で補正します。
1つは、コースごとに決めた標準の走破タイム(基準タイム)です。もう1つは馬場指数で、開催日・競馬場・芝ダートごとに、その日の馬場がどれだけ速いかを数値にしたものです。馬場指数は毎週人が入力する数値です。
RIでは、馬場の速さに相当するものを「レースの効果」として、そのレースに出走した馬の時計から推定します。基準タイムに相当する「コースの効果」も、過去のレースから一括で推定します。コースの効果をはじめとする決まった効果の数値は、年に1回ほど再計算します。
混合効果モデルによる走破タイムの分解
混合効果モデルは、どの観測にも同じ形で作用する要因と、グループごとに異なる数値をとる要因の合計で、観測した数値を表現する統計のモデルです。統計の用語では前者を固定効果と呼びます。後者は変量効果です。このページでは、それぞれ「決まった効果」「ばらつく効果」と記載します。
RIでは走破タイムを次のように分解します。
y = 1000mあたりの走破タイム(秒) y = 決まった効果(コース + 年齢×季節 + 牝 + 斤量) + レースの効果r(馬場・ペースなど、そのレースの全馬に共通する速さ) + 馬の力a + 誤差 RI = 60 − 25 ×(y − 決まった効果 − r) 大きいほど速い
コースは、競馬場・芝かダートか・距離・内回りか外回りかの組み合わせです。年齢×季節は、2歳の夏と3歳の春のように、成長の途中にある馬の時計の違いを表現します。勝ち馬から2秒より離れた部分は2秒で打ち切ります。追走をやめた馬の時計は力を反映しないからです。
レースの効果と馬の力は、出走の回数が少ないほど0の側へ縮小して推定します。1回しか出走していない馬の速い時計は、そのまま力とはみなさないためです。縮小の度合いは、誤差のばらつきとその効果のばらつきの比率で決定します。
RIは、走破タイムから決まった効果とレースの効果を差し引き、その残りを指数の尺度に換算したものです。馬場が速かった日や、ペースが速かったレースの影響は、レースの効果のほうに含まれます。2025年の全部の走では、RIの平均は65.8、中央値は65.2、上位1割の境界は83.4でした。
その日より後のレースの情報を含まない計算
指数を予測の材料にするなら、あるレースのRIに、その後のレースの結果が混入してはいけません。全部の期間を一括で推定するとこの混入が発生します。そこで、決まった効果の数値(コース・年齢×季節・牝・斤量の効果)だけを全部の期間から一括で推定して固定し、走ごとのRIは開催日の古い順に1日ずつ計算します。
馬ごとに、力の推定値と、その確からしさ(分散)を保持しています。初出走の馬は力0かつ確からしさが最も低い状態から開始します。レースのたびに次の順序で計算します。
- 前回の出走からの日数に応じて力の確からしさを低下させます。力は時間とともに変化するとみなし、1年で1000mあたり0.25秒の標準偏差だけ変動すると仮定しています。
- 出走馬の力の推定値と時計からそのレースの効果を推定します。確からしい馬ほど大きな重みで計算します。
- その走のRIとレース前の力・レース後の力を保存します。力の更新はカルマンフィルターの形式で、時計が力の推定値から外れた部分の一部だけを力に加算します。
同じ日のレースは、その日の開始時点の力で全部計算してから、一括で力を更新します。1つのレースは、そのレースのデータと、その時点の馬ごとの力と確からしさだけで計算できます。
3着以内の予測の精度の比較
2025年の4.1万走で、レース前に判明している数値だけを使用し、3着以内に入るかを予測する精度を比較しました。数値はレースの中での偏差に換算してから比較しています。対象は2走目以降で、レーティングと一般的な方式のスピード指数のある馬です。
| 材料(どれもレース前に判明するもの) | AUC |
|---|---|
| RIのレース前の力 | 0.7467 |
| 前走のRI | 0.7263 |
| 近3走の最高のRI | 0.7247 |
| レース前のレーティング(TrueSkillの μ−3σ) | 0.6959 |
| 一般的な方式のスピード指数(近3走の最高) | 0.6882 |
| 一般的な方式のスピード指数(前走) | 0.6874 |
AUCは、3着以内の馬と4着以下の馬を1頭ずつ選択したとき、前者のほうが高い数値になっている割合です。0.5なら当てずっぽうと同等です。1なら完全に区別できています。
推定した決まった効果の数値
決まった効果の数値は、2001〜2023年の108万走・128コースから推定したものを使用しています。1000mあたりで、誤差の標準偏差が0.280秒、レースの効果のばらつきが0.751秒、馬の力のばらつきが0.371秒でした。レースによる違いのほうが、馬の力の違いより大きいという結果です。
牝馬は1000mあたり0.114秒遅いという結果でした。斤量は1kg重いと0.005秒速いという、逆向きの数値になっています。強い馬ほど重い斤量を背負うので、その影響を除去しきれていないと考えています。
この期間に使用されていないコース(改修したコースや新しい距離)は、同じ芝・ダートで最も近い距離のコースの平均で補完します。
世代や性の違う馬を比較する予想RI
レース前の力は、年齢×季節・牝・斤量の影響を差し引いた数値なので、同じ条件の馬どうしの比較になります。3歳馬と古馬、牡馬と牝馬が一緒に出走するレースでは、このレースの条件の影響を加算し直した「予想RI」で比較します。基準は4歳・牡・55kgです。推定した数値では、3歳の1〜3月は −28、牝は −2.8の補正が付きます。
同じ式による前半の速さ(FI)と上がり(LI)
RIと同じ式で、残り600mまでの時計を計測したものがFI、上がり3ハロンを計測したものがLIです。計算の仕組みはRIと共通です。
FIで4コーナー3番手以内を予測するとAUC 0.755で、一般的な方式の先行指数は0.648でした。LIで上がり3位以内を予測すると0.714で、一般的な方式の上がり指数は0.665でした。出走馬のFIと頭数・クラス・前走の位置からはレースの前半の速さも予想して、出馬表の上部に表示しています。
レースの水準を表すELVとRLV
同じクラスのレースでも水準には差があります。そこでRIの尺度で、レースの水準を2つの数値で算出しています。どちらも着順や人気は材料にしていません。
ELV(Entry Level)は出走馬の水準です。出走馬のレース前の力の上位5頭の平均を使用します。結果を見ない数値なので、発走前に判明します。RLV(Result Level)は結果の水準です。そのレースで出たRIの上位3頭の平均を使用します。
どちらも基準との差で表示します。0なら標準的な水準で、プラスが大きいほど高い水準です。基準は芝・ダート、条件、年齢(2歳・3歳・3歳上・4歳上)の組み合わせごとに、2011〜2025年のレースの中央値から決定しています。年齢を分けるのは、同じ条件でも年齢で水準が違うからです。年齢を分けない基準では、芝のG1の出走馬の水準は2歳が −7.5、4歳上が +4.7でした。
ΔELVは相手の変化です。今回の出走馬の力から前走の出走馬の力を差し引いた数値で、基準は差し引きません。マイナスなら今回の相手が前走より弱く、プラスなら強いことを表します。出馬表では −5以下を赤、+5以上を灰色で表示します。
次走の成績との関係
2010年1月〜2026年10月の、次走のある70.6万走で次走の単勝回収率を集計しました。比較の相手は、芝・ダートと着順の帯、4コーナーの位置の帯が同じ馬です。
| その走の着順 | 数値の帯 | 次走の単勝回収率 | 比較の相手 |
|---|---|---|---|
| 6〜9着 | ELV +5〜+10 | 89.8% | 76.5% |
| 6〜9着 | ELV −10〜−5 | 54.8% | 75.7% |
| 2〜3着 | RLV +5〜+10 | 85.4% | 74.4% |
| 2〜3着 | RLV −10〜−5 | 65.0% | 74.4% |
| 6〜9着 | ΔELV −10〜−5(次走の相手が弱い) | 94.3% | 75.8% |
| 6〜9着 | ΔELV +5〜+10(次走の相手が強い) | 50.8% | 76.1% |
6〜9着の行の回収率には、95%の幅で±10〜13の誤差があります。ELVはどの着順でも高いほど次走の回収率が高い傾向でした。RLVで差が出るのは1〜3着の馬で、4着以下ではほとんど差が出ません。3つの中で差が最も大きいのは相手の変化です。
RIレベルを確認できる画面
RIレベルはELVとRLVをまとめた呼び方です。出馬表の「RIレベル」のタブには過去10走のELV・RLVを並べます。サマリーの右端の「前走Lv」では、前走のELV・RLVとΔELVを確認できます。馬詳細やレース馬検索の戦績にはELV・RLVの列があります。
レース成績一覧とレース検索の「レースレベル」のタブでは、レースごとの水準を確認できます。基準は [設定] - [レースレベルの基準] で確認できます。今回のレースの出走馬の水準と相手の変化は、予測モデルの特徴量にも使用しています。
セットアップの年数によらない同じ数値
RIは古い順に積み上げて計算するので、データを取得し始めた日が違うと数値も変わります。そこで、決まった効果の数値と、全部の走のレース前の状態(100MBほど)をアプリに同梱しています。短い期間しかセットアップしていないPCでも、作者のPCと同じ数値になることを確認しています。
用語のまとめ
- RI:走破タイムからコースや馬場などの影響を差し引いたスピード指数。大きいほど速い
- FI:残り600mまでの時計をRIと同じ式で計測した指数
- LI:上がり3ハロンをRIと同じ式で計測した指数
- レース前の力:そのレースより前の走から推定した馬の力
- 予想RI:レース前の力にそのレースの年齢・性・斤量の影響を加算した数値
- ELV:出走馬の水準。レース前の力の上位5頭の平均と基準の差
- RLV:結果の水準。そのレースのRIの上位3頭の平均と基準の差
- ΔELV:相手の変化。今回の出走馬の力と前走の出走馬の力の差。マイナスなら今回の相手が弱い
- RIレベル:ELVとRLVをまとめた呼び方
次はレーティング:着順の積み重ねから強さを計測します。